相手が遺留分の請求に応じてくれない場合の対処方法
1 最終的には裁判による遺留分侵害額請求が必要
遺留分を侵害している遺言が存在する場合などにおいては、法律上は、遺留分権利者が遺留分を侵害している受遺者等に対して、遺留分侵害額を支払うよう請求することができます。
もっとも、現実においては、遺留分を侵害している受遺者等へ遺留分侵害額相当額の金銭を支払うよう連絡をしても、拒否されてしまうことや、無視をされてしまうということもあります。
このようなときは、遺留分侵害額請求権が時効で消滅することを防ぐため、改めて内容証明郵便を用いて請求の意思がある旨、および話し合いをしたい旨の連絡をします。
それでも支払いを拒否されたり、連絡が取れないときには、裁判所を通じた手続きで対処することになります。
以下、相手が遺留分の請求に応じてくれない場合の対応の流れについて、詳しく説明します。
2 内容証明郵便による請求の意思表示と話し合いの申し入れ
遺留分の請求において注意すべき点のひとつとして、遺留分侵害額請求権は、相続開始および遺留分の侵害を知ったときから1年で消滅時効が完成する、ということが挙げられます。
そこで、まずは配達証明付内容証明郵便を用いて、相手に対して遺留分侵害額請求の意思表示をすることで、消滅時効の進行をストップします。
配達証明付内容証明郵便を使用する理由は、遺留分侵害額請求の意思表示をしたことを、後日客観的に証明できるようにしておくためです。
併せて、改めて遺留分について話し合いをしたい旨、および連絡がない場合には法的手続きに移行する旨も記載することで、相手から連絡を受けられる可能性が高まります。
3 遺留分侵害額請求調停の提起
内容証明郵便によって消滅時効の進行はストップしたものの、それでも相手から連絡が受けられない場合や、話し合いがまとまらない場合には、裁判所を通じた遺留分侵害額請求をせざるを得ません。
一般的には、まず家庭裁判所に、遺留分侵害額の支払いを求める調停の申し立てをします。
調停は調停委員を介した話し合いであり、遺留分として支払う金額や支払い条件等について、当事者同士が合意することができたら、合意内容に従って遺留分の支払いを受けることで終了します。
4 遺留分侵害額請求訴訟の提起
調停でも当事者が合意に至ることができない場合には、民事訴訟を提起して遺留分侵害額請求をすることになります。
遺留分侵害額請求訴訟は、話し合いではなく、民事訴訟法に基づいて遺留分侵害額が発生する事実を主張し、かつその事実を証拠で証明していく必要があります。
訴訟であっても、訴訟上または訴訟外で和解ができた場合には、判決に至る前に終了することができます。