Q&A
遺言書に「遺留分は請求しないように」と書いてあれば,遺留分は請求できないのですか?
- 1 「遺留分は請求しないように」という記載に法的効力はありません
遺留分は,一定の相続人に認められた法的利益であるため,遺言者であっても,この利益を侵害することはできません。
そのため,たとえ遺言書に「遺留分は請求しないように」と記載されていたとしても,そのことによって遺留分を請求できなくなるということはありません。
では,法的効果がないにもかかわらず,なぜそのよう記載をしておくのでしょうか。
実は遺言書に記載できることは,遺産の分け方や遺言執行者の指定など,法律で定められた事項に限られます。
それ以外の記載は付言事項と呼ばれるもので,法的効果はないものの,遺言者の願いや気持ちが記載されることがよくあります。
「遺留分は請求しないように」という記載もこの付言事項にあたり,遺言者が,特定の人に多くの財産を残したいという希望を叶えるために,記載しておくものです。
- 2 遺留分が請求できない場合もあるので注意
上記のとおり,付言事項そのもので遺留分が請求できなくなることはありません。
しかし,それ以外の理由で遺留分を請求できなくなることはあるので注意が必要です。
たとえば,生前贈与を受けている場合は遺留分を請求できない可能性があります。
遺留分は一定の相続人に対し,遺産の一部を保障するための制度ですが,生前贈与を受けている場合は,すでに遺産の一部をもらっていると考えることができるため,一定額以上生前贈与を受けている場合は遺留分を請求できません。
遺留分を請求できるかどうかの計算は非常に複雑であるため,生前贈与を受けた方は弁護士に相談することをお勧めします。
- 3 まとめ
仮に遺留分が発生しないのであれば,遺言書に「遺留分を請求しないように」という記載をする必要はありません。
そのため,遺言書にそのような文言がある場合,遺留分を請求できるケースが多いと言えます。
もっとも,遺留分としてどれくらいの請求ができるのかということは,専門的知識が必要になります。
また,遺留分の請求には期間の制限があるため,遺留分の請求を検討されている方はできるだけ早く弁護士に相談することをお勧めします。